「幼児教育」の重要性とは?
幼児教育とは、一般的に「0歳から就学前までの子ども」の教育を指しています。子どもの人間形成の基礎をつくり、生きる力を養うために必要なものを身につけてくためのものです。教材を使った学習や習い事をイメージしがちですが、それらはあくまでも「幼児教育」の一部。メインは、毎日の生活の中にあります。食事や着替え、トイレ、入浴などの生活習慣を身につけたり、歌をうたったり体を動かして遊んだり、言葉を覚えたり、挨拶やルールを学んだり、子どもの成長にあわせて「生きていくのに必要なこと」を広く学んでいきます。これらは毎日の繰り返しの中で子ども自身が体得していくものなので、幼児期の一日一日の過ごし方・体験はとても重要です。
家庭での幼児教育はもちろん、保育園や幼稚園などで同年代の子どもと集団生活することも、とても重要な幼児教育となります。子ども同士でお互いにいい刺激を受けたり、社会性も育まれていきます。また、集団で過ごすことに慣れたり、集中力や忍耐力を養うこともでき、小学校で授業を受ける姿勢を身につけることにもつながります。
「幼児教育」と「早期教育」の違いについて
幼児教育の様々なメソッドをご紹介する前に!
「幼児教育」と「早期教育」はよく混同されやすいので、ここは要注意です。
「幼児教育」は、日常の生活や遊びの中での様々な体験によって、一人の人間として生きていくための基盤となるものを養っていきます。家庭でのひとつひとつの体験もこの幼児教育に含まれます。幼児教育の中で読み・書きなどの学習を行うこともありますが、学力向上のためではなく、生活に必要な知識として学んだり、学びを通じて子どもの世界を広げることを目的としています。
一方で「早期教育」は、学力の向上を目的とした知的教育や、小学校受験のための専門的な教育などです。知識の習得のほか、芸術やスポーツで高度なスキルを習得するための幼児期からの訓練もこちらに含まれます。
●幼児教育
目的:人間形成や生活習慣の習得など「生きる力」を養う
内容:生活や遊びなどの体験を通じて「様々なことを学ぶ力の基礎」を養い、個性を伸ばしたり、コミュニケーション力を身につけたりしながら、こころとからだの健やかな成長を促す。
●早期教育
目的:学力向上、特定の知識・技術の習得、お受験のためのお勉強など
内容:読み・書き・計算などの小学校での学習の先取り、特定の分野における高度な学習、お受験対策など。
世界で導入されている幼児教育メソッド
幼児教育にも様々な種類があり、それぞれ大切にしている考え方やアプローチ方法は異なっています。その中から、子どもの個性に合った最適なメソッドを選ぶのが一番ですよね。そこでまずは、世界の保育・教育環境で導入されている特に有名なメソッドをピックアップしました。大まかな特徴をおさえつつ、幼児教育に対する考え方の参考にしたり、視野を広げるのに役立てていただけたらと思います。
(※幼児期だけでなく就学後の教育までを範囲としたメソッドも含まれていますが、ここでは「幼児教育」に関わる部分をご紹介しています。)
●モンテッソーリ教育(from イタリア)
「自己教育力」をモットーとし、多くのリーダーを輩出している世界的に有名なメソッド。
子どもには自分を育てる力が備わっているため、子どもが自分の意志で自由に教具を選んで活動できるように「環境」を整え、大人は子どもの要求を汲み取って見守ることを大事にしています。また、モンテッソーリ教育を取り入れた幼児教育施設では、子どもが社会性や協調性を養えるよう、1つのクラスに年齢の異なる子どもたちを混合しているのも特徴です。
●シュタイナー教育(from ドイツ)
人間の成長を7年周期で考え、「人間の本質的な能力」の育成を目的としたメソッド。
第一期(0~7歳)は「意思の力を育む」ことに重点をおき、からだを動かしたり、五感を用いて本物の世界を感じる教育を行います。シュタイナー教育全体において、本物の自然にふれることや、芸術的な活動を取り入れることを大切にしているのが大きな特徴です。こちらも世界的に有名なメソッドの1つで、多くのリーダーや文化人を輩出しています。
●レッジョ・エミリア・アプローチ(from イタリア)
子どもの個性と自主性を育む「グループによるプロジェクト活動」が特徴のメソッド。
活動のテーマや主導も、子どもが中心。大人は子どもの行動をよく観察し、そのとき子どもが興味・関心を持っていることに対して、コミュニケーションをとりながらサポートしていきます。子どもたちが自ら創る活動によって、試行錯誤する力や、積極性、協調性なども育まれていきます。
●ピラミッドメソッド(from オランダ)
子どもの「自分で選択して決断できる力」を養うことに重点をおいたメソッド。
4つの基本概念(子どもの自主性(やる気)/保育者の自主性(働きかけ)/寄り添うこと/距離をおくこと)のもと、子どもの意志を尊重して、自己解決力や行動力、意志を伝える力などを養っていきます。子どもが遊びに集中・満喫できるような空間づくりや、子どもの興味や経験を発展させていくための働きかけなどにも注力しています。
日本生まれの幼児教育メソッド
日本生まれのメソッドでは、「心」の教育を大切にすると同時に、読み・書き・計算などの学習を通じて「学力」も磨いていける傾向があるようです。今回は代表的な3つのメソッドをご紹介します。
●石井式漢字教育
「幼児期の言葉の学習」に着目したメソッド。
オリジナル教材である漢字かな交じりの絵本を毎日繰り返し読み聞かせることで、子どもたちは遊び感覚で楽しみながら、脳の体幹 「脳幹」 = 思考力・読解力・表現力が育まれていきます。また、リズム感のある美しい日本語と、本物の美術作品(第一線で活躍する画家による挿絵)にたくさんふれ、「学ぶことの楽しさ」と「豊かな情操・感覚」を身につけます。
●七田式教育
心の教育を重視した「全人格教育」と、「右脳教育」に力を入れたメソッド。
一人ひとりの個性を認めて、ほめて、愛して育てる教育で、その子が本来持つ才能を最大限に引き出していきます。子どもが楽しみながら遊びを通して学び、自ら発見して気づくことを大切にしているのがポイント。年齢別の豊富な教材で高い学力を育てるとともに、世界で活躍できる大きな志と奉仕の心を持ち、自らリーダーシップを取れる子を育てます。
●ヨコミネ式教育法
自ら考え、判断、行動、実践できる子どもに育てるための、「自立」を目的としたメソッド。
「すべての子どもが天才である」という考えに基づいて子どものやる気を起こし、生まれ持っている才能を引き出すことを大切にしています。そのために幼児期から「読み・書き・計算・体操・音楽」に取り組み、チャレンジと試行錯誤を繰り返す中で「学ぶ力」「体の力」「心の力」を育みます。
幼児教育で、特に今注目されていることは?
目まぐるしく変化する世の中で、これから子どもたちが生きていく未来は、近い将来のことも、遠い先のことも、誰にも予測のできないものとなりました。どんな世の中であったとしても、そこで自分らしく、他者と共生しながら社会をつくり、豊かに生きていける力を育むことの必要性や重要性が、今、世界中で論じられています。そうした力の基礎の多くは幼児期に育まれるため、幼児教育において次のポイントが特に注目を集めています。
◇「非認知能力」を伸ばす
近年、幼児教育において特に注目されているのが「非認知能力」を養うことです。これは、子どもの意欲や主体性、創造性、計画性、忍耐力、協調性、コミュニケーション能力など、社会でより豊かに生きていくために欠かせない力。IQのように測定することはできない力ですが、急速に変化を続けるグローバル社会の中でこれからの未来を生きていく子どもたちにとって、ますます重要な力になっていくと言われています。
◇子どもの世界を広げる
様々な体験を通して、いろいろな感情を抱くことも大切。「やってみたい!」「気になる!」という自らの意志や好奇心のもと主体的に行動したり、新しいものごととの出会いを楽しむ中で子どもの世界は広がっていきます。そのための環境やきっかけを幼児期からたくさんつくっていくことが、子どもの個性や将来の可能性を広げることにもつながります。
子どもも親も無理をせず、「その子に合った幼児教育メソッド」を採用しよう!Conclusion
幼児教育で大切なのは、子どもの「自主性」と「達成感」を大事にすることです。子どもの興味・関心や個性にあわせて、その子に合う幼児教育メソッドを取り入れましょう。子どもに無理強いをせず、親も無理をせず、一日一日をともに楽しめることが基本です。
難しく考え過ぎたり、身構えたりするよりも、「どう接してあげたいか」「どんな日々を過ごしてほしいか」「どんなところを伸ばしてあげたいか」などを軸に、気になる幼児教育メソッドを調べてみるのがおすすめです。家庭生活の中での幼児教育から、園選び、習い事などにも、参考になる考え方や手段がきっと見つかると思いますよ!