「STEAM教育(スティーム教育)」とは?
「STEAM教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの分野の頭文字を組み合わせた教育概念です。
4つの理数系領域(Science、Technology、Engineering、Mathematics)では「論理的思考力」や「課題解決力」を、芸術文科系領域(Arts)では「創造力・表現力」を養い、これらの分野を横断して学んでいくことで、「予測のできない新時代を豊かに生きていくための力」を育むことを目的としています。
世界中で様々な取り組みが広がっている中、日本でも教育の新たなキーワードとして新学習指導要領の中にも「STEAM教育」の考えが盛り込まれており、子どもたちみんなに関係するものとなっています。
<STEAM教育>
●S = Science(科学):
数理的思考の土台となる「課題や法則に気付く力」を養います。子どもが身の回りの様々な物事や現象に、好奇心をもつきっかけに!
●T = Technology(技術)
プログラミング学習などで「論理的思考力や課題解決力」を養います。2020年度から小学校でも必修に!
●E = Engineering(工学、ものづくり)
産業で必要となる「生産力」や「空間的把握能力」の土台づくり。キットを使ったロボットの工作など、かなり本格的なものも!
●A = Arts(芸術、リベラルアーツ)
「創造力」や「自分の考えを表現する力・伝える力」を養います。これは「人とコミュニケーションをして、共に生きるための力」にもつながります!
●M = Mathematics(数学)
「論理的思考力」を養います。幼児期のブロックや積み木遊びも、ここにつながっていきます!
なぜ今、世界中で注目されているの?どうして必要なの?
もともとは、数理的思考力を重視した「STEM教育」でした。2000年代にアメリカが国家戦略として理数系の人材育成を強化するために始めたもので、オバマ元米大統領が演説の中で「ビデオゲームを買ったりアプリで遊んだりするだけでなく、それらのゲームを作れるようになろう!」と話題にしたことで一躍世界に広がっていきました。
そして時代が進み、IT化やグローバル化の加速によって社会はさらに急激に変化し、もはや誰にも予測ができないと言われるほどに。そんな中でこれからの未来を担う子どもたちには、「技術を使いこなすだけでなく、つくりだす能力」や、「AIに使われるのではなく、活用して生きる力」を育むことが重要だと論じられるようになりました。
そこで着目されたのが、「Arts」です。芸術やリベラルアーツの幅広い領域を組み合わせることで、AIには難しい創造力や、共感力・表現力を含むコミュニケーション力など、「新たな時代を社会と共につくり、豊かに生きていく力」を育むことを目指しています。そうした理由から、「STEM」+「A」で「STEAM教育」へと発展しました。
「STEAM教育」って実際何をするの? 日本と、海外の事例をチェック
◇日本の「STEAM教育」
日本でも「STEAM教育」は新たなキーワードとなっており、2020年度からの新学習指導要領にもしっかりとこの考え方が盛り込まれているんです。小学校でもプログラミングの授業が必修となったり、文理融合の学びや、実践を伴うアクティブラーニング、ICTを活用した授業など、小学校・中学校・高校・大学の全般を通じて様々なところでSTEAM教育とつながっていきます。でもまだ始まったばかりなので、今後どんどん新たな動きが出てくるでしょう。
また、子どもの習い事でも「プログラミング教室」が人気になっているように、学校以外のところでもSTEAM教育に関連するサービスやツールがどんどん増えてきています。他にも、ロボットをはじめ最先端のものづくりを学べる教室や、身近な科学を楽しく学べるサイエンス教室など、定期的に通うスタイルはもちろん、夏休みなどの体験イベント型、通信教育、アプリや知育玩具等、次々に新しいものが出ているので、お子さんが好きそうなものを探してみるのもいいかもしれませんね。
◇海外の「STEAM教育」
世界各国で推進されている「STEAM教育」。中でも、特に注目されている海外の事例をご紹介します。
●シンガポール
政府直属のSTEAM教育機関「サイエンスセンター」では、修士号や博士号を持つスペシャリストによる授業を展開しています。生徒自身が「なぜSTEAM教育が必要なのか?」ということを理解しながら実践的な知識を身につけていけるよう、社会での使われ方に基づいた学びが特徴となっています。
●アメリカ
STEAM教育を実践する学校「High Tech High」では、プログラミングや非認知能力の育成に力を入れています。チームを組んでプロジェクトに取り組むなど、自分たちで考え、実現する力を養います。授業料は無料、教科書なし、成績表なしというのも特徴で、興味のあることに思いきり打ち込むことができます。
●中国
中国には、STEAM教育を推進する教育ロボットメーカー「Makeblock」の本社があります。ロボット制作やプログラミングを楽しく学べるツールを開発し、世界中に事業展開している企業です。「Makeblock」は、STEAM教育ソリューションプロバイダーとして、様々なサービスを通じてSTEAM教育に取り組みやすい環境づくりを行っています。
●イスラエル
1990年代に、世界に先駆けてプログラミング教育を必修科目にしたイスラエル。「第二のシリコンバレー」と呼ばれるほどのIT大国ということもあり、小学校からプログラミング教育やサイバー教育が行われています。幼稚園では、遊びの中で「仮説→検証」というアプローチを繰り返して科学的な思考や技術を体験していきます。同時に、独創的なものの見方や表現の素地をつくることも大切にしているので、勉強ではなく「遊び」の一環としてのびのび取り組まれています。
保育園や幼稚園の中には、すでに「STEAM教育」の要素がたくさんある!?
ここからが今回のコラムの本題です!プログラミングやサイエンスなど難しいお勉強的なものをイメージしがちですが、実は保育園や幼稚園の普段の活動の中には、「STEAM教育」のファーストステップになるものがすでにたくさん含まれているんです。
ただし、同じ活動でも、より深いSTEAM教育的な学びにつながるかどうかは、活動中の先生の子どもへの接し方に大きく左右されるので、園選びの際は、下記のポイントを参考にチェックしつつ、特に①に注目してみるといいかもしれません。
◇特に注目!すべての要になるポイント
●園生活でのSTEAM教育ポイント①先生の言葉かけ・接し方
先生の言葉かけや接し方そのものが、STEAM教育的であるかどうかというのが重要です。「どうしてかな?」と疑問や課題を投げかけることで、子どもたちの好奇心や探求心を刺激し、起こった事象に対する因果関係を考えたり、次の行動や思考に自発性や独創性が生まれ、それらを育くむきっかけへと繋げることができます。また、「どうやったらできるかな?」と問いかけることで、課題解決への道筋を考えたり、お友だちと相談したり、先生に質問したり、先を見通しながら試行錯誤して解決に向けてトライしてみるという力が育まれます。
◇具体的な活動はここをチェック!
●園生活でのSTEAM教育ポイント②自然体験
お散歩や遠足で植物や昆虫にふれたり、園で花や野菜を育てたり、雨や雪など天気を気にしたり、積極的に自然とふれあう様々な活動があります。見て、触って、においをかいで、変化を観察して…と五感で体験しながら興味や疑問をもつことは、「Science(科学)」の基礎につながります。
●園生活でのSTEAM教育ポイント③製作
折り紙をしたり、はさみとのりで切り貼りしたり、サイズやバランスを考えながら素材を組み合わせたり、色を塗ったりする中には、「Engineering(工学・ものづくり)」「Arts(芸術・リベラルアーツ)」「Mathematics(数学)」の要素があります。
●園生活でのSTEAM教育ポイント④知育玩具
「積み木」「ブロック」「パズル」などは、様々な異なるパーツを組み合わせて試行錯誤しながら遊びます。ものの形・大きさ・向き・バランスなどを捉える空間認識能力を高め、想像力や創造力も育みます。こちらも「Engineering(工学・ものづくり)」「Arts(芸術・リベラルアーツ)」「Mathematics(数学)」の要素があります。
●園生活でのSTEAM教育ポイント⑤科学あそび
保育の中でよく行われている、子どもたちにとって身近なテーマでの科学あそび。「色水あそび」「糸電話あそび」「氷が溶けるのを観察」「寒い日に『白い息』をはいてみよう」なども実はこれに該当します。日常の中にある科学的な事象を、楽しみながら、「どうしてそうなるの?」「おもしろい!」「こうしたらどうなるかな?」などの「Science(科学)」的な思考が育ちます。
最新の専門的な「STEAM教育」を導入している園も!
より専門的なカリキュラムで「STEAM教育」を充実させている保育園や幼稚園もあります。例えば、プロの講師によるサイエンス学習、プログラミングが学べる知育玩具、幼児向けのロボット工作など、最新のツールや学習環境を取り入れる園も増えてきているようです。
そうした園は、もともと幼児教育や英語保育に力を入れている傾向があるため、総合的にカリキュラムが充実していることが多いです。中には「STEAM教育も英語で行う」という園もあったり、保育園や幼稚園での「STEAM教育」にも園ごとに様々な特徴が出てきています。
「STEAM教育」も「英語」も、世界共通でこれからの時代のために必要な準備。Conclusion
「STEAM教育」とは、これからの時代に求められるスキルを育むための教育概念。世界中で注目されているのは、それだけ重要で、急を要する施策だということです。
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)という、理数系領域と芸術文化系領域を横断しながら学びを深めていくことで、「自ら学び、考え、つくりだせる力」や「共感力やコミュニケーション力をもって、課題を解決し、よりよい社会をつくっていく力」を身につけていきます。
日本でも、世界でも、同じ志をもってこの「STEAM教育」が広がっていっています。国レベルではなく、地球レベルで、新しい未来をつくっていこうとしているのです。そうした動きから見ても、英語や異文化を学ぶことはとても自然なことで、その先に広がるあらゆる世界や未来のために必要な準備なんだなと実感させられますね。