オランダの英語教育ってすごい!
現在、オランダの法律では外国語教科は10歳からが必修となるのですが、各校の裁量で、ほとんどの小学校が前倒しで5歳(小学校1年生にあたる年齢)から第1外国語として英語の授業を導入しています。さらに、幼稚園にあたる課程の4~5歳児クラスから英語教育を義務化させようという動きもあり、すでに世界トップレベルの実績があるオランダでさえも英語教育スタートのさらなる低年齢化傾向が見られるそうです。
教育目標としては、外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)によりレベル基準が設けられており、12歳までに「よく使われる日常的表現と基本的な言い回しを理解し、用いることができるレベル」「日常的な範囲なら、単純で直接的な情報交換に応じることができるレベル」への到達を目指しています。
つまり、初等教育の間に「日常会話ができるようになる」ような英語教育が行われているということですね。どんな内容なのかとても気になるところです。
オランダでは子どもの英語教育への保護者の関心も非常に高く、子どもを進学させる小学校を選ぶ際には「どのような英語教育が行われているか」も重要な判断材料になっているそうです。
オランダの小学校の英語の授業って、どんな内容なの?
では実際に、オランダの小学校ではどのような英語教育が行われているのでしょうか?
◆「子どもの興味を重視した」楽しい授業と教材
なんと驚くべきことに、国によって指定されたカリキュラムはなく、教材も内容も学校ごとに自由に選べるようになっています。しかも、一般的に6~10歳までは教科書を使った座学はほとんどないとのこと。
まずは、みんなで英語の歌を歌ったり踊ったりすることから始めます。誰もが知っているような有名な英語の曲を、モニターに歌詞を映しながら大きな声で合唱したり、歌詞の中に出てくる単語や言い回しを活用して簡単な英文を学んだりしていきます。歌の他にも、英文や単語を学ぶための教材では、映像を画面に映し出してネイティブの発音を何度も聞いて、同じように発音できるまでシャドーイングを繰り返したり、テキストを大きな声で音読したりします。
高学年になると、扱う英語の難易度が上がったり覚える単語の量は増えますが、それでも基本的には同じスタイルの授業となっているそうです。
何よりも子どもが興味を持ち、勉強感覚ではなく英語に親しむこと自体を楽しむことが重視されているので、最新の人気ポップソングや、YouTubeの動画コンテンツが教材になることも。勉強というより、レクリエーションみたいで楽しそうですね!
◆ポイントは「大きな声」と「カラフルな教材」
「大きな声」で音読したり歌を歌ったりすると、横隔膜をたっぷりと振動させることになり、若い脳を効果的に活性化させるという調査報告があり、学習意欲や学びの吸収力の向上につながると言われています。
またオランダの小学校では、教科書や教材を使う場合は、カラフルで写真やイラストが豊富なものを選んでいるそうです。子どもの興味を引き、英語の授業を楽しめるようにという意図もありますが、カラフルな写真やイラストは言語をつかさどる左脳だけでなく、視覚や聴覚をつかさどる右脳も刺激する効果があるため、脳へのアプローチという面でも戦略的に活用されていると言えます。
文法よりも、「コミュニケーションに重点」を置いた英語教育
オランダの小学校の英語教育の大きな特徴のひとつが、「英文法の授業はほぼなし」ということ。ルールで堅苦しい学び方をするよりも、思うようにのびのびと英語を使っていくことのほうが身になりやすいのでしょう。
耳から入った英語を理解し、自分の考えを英語で話す。つまり、英語を「実用的なコミュニケーションツール」として学んでいきます。
オランダ政府は、初等教育での英語教育に関する中核目標として、以下の4項目のみを掲げています。
●生徒は、簡単な英語のテキストまたは口頭から情報を得ることを学ぶ。
●生徒は、英語で簡単な項目について質問したり、情報を与えたりすることを学び、英語で自分自身を表現しようとする態度を育む。
●生徒は、毎日の話題に関する簡単な言葉のスペルを学ぶ。
●生徒は、辞書を使って単語の意味や英単語のスペルを調べることを学ぶ。
ここからもわかるように、文法(ルール)は子どもの英語教育で重視しなくてもよいのではないかということ。オランダの子どもたちは、英語の「学び方」を学び、英語を耳と口で「使って吸収していくこと」を学んでいるのですね。
オランダの英語教員のレベルが高い理由と、授業で心がけている教え方
◆オランダの英語教員のレベルが高い理由は?
オランダの小学校で英語を教えるのは、外部委託ではなく、小学校教員資格を有した教員=「ふつうの小学校の先生」となっています。それでどうしてオランダ全体で質の高い英語の授業ができるのでしょうか?
実は、オランダでは小学校の教員教育コースに入学するにはCEFRのB2レベル(※)が必要なので、先生になる前から流暢に使いこなせる高い英語力を持っているんです。やはり、教える先生の英語力は重要。子どもたちにとって毎日の身近な存在である先生が英語を教えてくれるので、より英語を身近に感じながら自然体で学んでいける環境だと言えるでしょう。
※CEFRとは、「ヨーロッパ言語共通参照枠」。ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際に用いられるガイドラインで、B2レベルは「学問上や職業上の目的で、柔軟かつ効果的に言語を用いることができるレベル」。
◆オランダの小学校の先生が、英語の授業で心がけていること
そんなオランダの小学校の先生が、英語の授業で心がけている教え方をいくつかご紹介します。小学校のうちに、授業だけで日常会話レベルの英語力がしっかり身につく秘訣をのぞいてみましょう。
<英語の授業で心がけていること>
●ネイティブの英語を、何度も繰り返し聞かせる。
●同じように発音できるようになるまで、繰り返しシャドーイングさせる。
●英語で「自分のこと」を話すよう意識させる。(自分自身や家族のことなど身近なテーマを設けて話しやすくするのもポイント)
●英語を話すことを怖がらないように意識して指導する。(学びはじめは特に緊張してしまうもの。英語に対して壁をつくったり、間違うことを恐れないようにするために、「英語を話すのは楽しいこと!」だと意識して伝える。)
●子どもたちの「英語に対する積極性」を育てることを大切にする。
など。
ネイティブの英語をたくさん聞いて、たくさん真似して、吸収する。自分のことを自分の英語で話せるように練習する。そして、何よりも英語を楽しむ!そんな習慣を子どもに身につけさせてあげることがポイントのようです。
オランダの「世界一の英語教育」のポイントは、園選びや英語育児に活用できる!Conclusion
世界一の実績を持つオランダの英語教育、いかがでしたか?
今回は小学校での英語教育についてをご紹介しましたが、日本での英語保育や英語育児にも参考になるポイントがたくさんあったと思います。
●とにかく楽しく学ぶ!歌ったり踊ったりは、英語のスタート学習に効果的。
●たくさん聞いて、大きな声に出す。
●子どもが興味をもつ多様な教材を活用して、「英語を使いたくなる」工夫をする。
●文法よりも、英語を使ってのコミュニケーションを重視する。
●先生の英語力と指導力はどちらも大事。
英語保育を導入する園を選ぶ際にも、ご自宅で英語育児に取り組む際にも、これらのポイントをぜひ参考にしてみてください。