今回の「教育改革」の概要と、2020年度からの「新学習指導要領」について
◆今回の教育改革の概要について
世界や社会の目まぐるしい変化に伴い、あらゆる面で「新しい時代」を実感せざるをえない日々を私たちは生きています。日本においても、グローバル化は日常レベルにまで及ぶようになり、住んでいる場所や職業、本人が望む望まないに関わらず、グローバル基準で考え行動する力が求められるようになってきました。その代表となるのが、「英語力」と「異文化理解」「多様性」。こうした社会を豊かに生きるために必要となる力を、学校教育を通じて養成する仕組みをつくることが教育改革の目的です。
そんな今回の教育改革の中で特に注力されているのが、「英語を使う力」を伸ばすこと。そのために、小学校、中学校、高校の英語の授業は、新学習指導要領のもと「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の英語4技能を強化する英語の授業へと変わっていきます。
◆新学習指導要領について
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)で、教科書や時間割はこれをもとにつくられます。社会の変化を見据えながら、未来を生きていく子どもたちにとってこれから必要となる資質や能力について見直しを行い、約10年ごとに改訂されています。そして今回改訂された新学習指導要領は、2020年度に小学校から先行してスタートしました。「プログラミング教育」の必修化もその一つです。
新学習指導要領では、下記の「資質・能力の三つの柱」をバランスよく育むため、各教科等で様々な改訂が行われました。
<新学習指導要領で目指す「資質・能力の三つの柱」> ※以下、文部科学省HPより抜粋
●実際の社会や社会の中で生きて働く「知識及び技能」
●未知の状況にも対応できる「思考力,判断力,表現力等」
●学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力,人間力等」
2020年度からの「小学校の英語」の授業はこう変わる!
これまで、小学校での英語は「外国語活動」として5年生から導入されていましたが、「英語に楽しく触れてみよう!」という感じのもので、読み書きや文法などのお勉強的なことはせず成績もつきませんでした。しかし、2020年度から新学習指導要領が実施されたことで、ここに大きな変化が。3年生から「外国語活動」をスタートし、5年生からは「英語」として成績のつく教科になったのです。新学習指導要領では、英語という「言語」を学ばせるだけでなく、国際理解を深めたり、自分の考えを相手に伝え、相手の考えを受け入れるための「コミュニケーションツール」として学んでいくことを重視しています。
◆小学校3・4年生は、英語の「必修化」(外国語活動)
英語であいさつの練習をしたりゲームをしたり、友達や先生との「やりとり」を通して、英語の音やリズムに親しみコミュニケーションを図ることの楽しさを学んでいきます。また、「外国語活動」として、英語だけでなく、世界の国のあいさつや文化などにも触れながら、日本と外国の言語や文化について理解することも目標としています。
●英語(外国語活動)の授業数:0 → 35コマ(週1コマ程度)
●授業の目的:「英語に親しむ」こと。
●授業の内容:2技能3領域(「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」)でのコミュニケーションが中心。
◆小学校5・6年生は、英語の「教科化」
「教科」になることで、成績がつくようになります。これまでの中学1年生での学習内容の多くが前倒しされ、600~700語程度の語彙習得と、文法を含む基本的な英語表現も学んでいきます。実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身につけることを目標としています。
●英語の授業数:外国語活動 35コマ → 英語 70コマ(週2コマ程度)
●授業の目的:「英語によるコミュニケーションスキルの基礎を養う」こと。
●授業の内容:4技能5領域(「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」に、「読むこと」「書くこと」が加わる)となり、文法を含む基本的な英語表現を学ぶ。
2021年度からの「中学校の英語」の授業はこう変わる!
新学習指導要領で目指す「資質・能力の三つの柱」を養うために、中学校の英語では「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4技能を統合的に学ぶようになります。当然、学習内容もレベルアップします。
【中学校の英語の要チェックポイント】
◆①英語の授業は、基本「すべて英語で」行われるようになる
日本語+英語ではなく、All Englishに。先生からの説明だけでなく、質問や、生徒同士のやりとりも、英語の授業中は「すべて英語で」が基本となります。4技能のうち、特に「聞くこと」「話すこと」を強化するという狙いがあるようです。さらに、発表やディスカッションなどで、英語で自分の考えや気持ちを伝え合う力を養っていきます。
◆②学習する英単語数がこれまでの1.5倍に増える
中学校の3年間で学習する英単語数は「1600~1800語程度」となり、これまでの1200語程度から約1.5倍に増えます。単語の増加によって、長文も増えてきます。
◆③高校の文法の前倒しで、難易度もアップする
これまで高校で学習していた範囲の文法の一部が前倒しされ、中学校の英語の難易度はかなりレベルアップします。授業時間数は増えずに、学習する量も質もアップ。そのため、授業のスピードアップも必然…。小学校までの英語学習の習得度合が、中学校での英語の授業にも響いてきそうですね。
「高校の英語」の授業や「大学入試」も、変化する?
◆「高校の英語」の授業について
高校では、2022年度から新学習指導要領が実施されていきます。小学校・中学校の英語の授業内容がそれぞれ前倒しされていくということは、当然その分、高校の英語の授業も高度化し、国際社会で実際に英語を活用していくためのより発展的な内容になります。
4技能5領域(「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」)をそれぞれ磨きながら、これらを統合的に扱えるようになることを目指します。高校の英語は、4技能5領域を統合的に扱う科目「英語コミュニケーション」と、英語による発信能力を高める科目「論理・表現」が新設され、この2科目での構成に変わりました。英語によるスピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッションなど、これまで以上に「英語を使う」「英語で他者と協力を図る」といった実用的な英語力を培っていくことになります。
◆「大学入試」について
高校の英語の授業は、2020年度から順次進んでいく「大学入試改革」にも対応していくことになります。
「大学入試改革」の第一段階として、2020年度(2021年1月実施)から「大学入試センター試験」は「大学入学共通テスト」へと変わり、問題の傾向だけでなく、問題文がすべて英語になるという変化も始まっています。2020年度以降の大学入試では、これまでよりも高い英文読解力やリスニング力、「書く」「話す」ためのアウトプット力、それらの基礎となる確かな文法力や、語彙の活用能力が求められるように。2024年度の「大学入学共通テスト」からは、高校の新学習指導要領に基づいた内容へとさらに全面改革される見通しとなっています。
幼児期に英語に慣れておくことが、ますます重要に!
新学習指導要領によって、大きく変わりはじめた日本の英語教育。これまでの「読み」「書き」中心の学習から、「聞く」「話す」を重視した学習へと変わり、試験のためではなく、グローバル化が加速する実生活の中で「コミュニケーションツール」として活用するための英語力を目指すようになりました。
小学校、中学校、高校で一貫した学びとなるようにカリキュラムが組まれ、それぞれ前倒しをしながら授業が高度化していくということからも、早いうちから英語に親しみ、英語を楽しめるようになっておくことは本当に重要だとますます実感がわいてきますね。学校での「勉強」になる前に、英語に耳を慣らす、日常の中で英語にふれる時間を持つ、英語の楽しさを感じるなどの経験を、ぜひ少しずつでも始めてみてほしいなと思います。
また、新学習指導要領では、英語という「言語」だけでなく、世界のことや異文化、異なる背景を持つことへの理解なども学習目標として示されています。これからの社会では、異文化や多様性など自分と相手との違いを理解したり認め合ったりすることも、英語でのコミュニケーションの前提にあります。そうした観点からも、偏見のないやわらかなこころで向き合うことのできる幼児期に、英語や異文化に日常のなかで触れていくことのできる英語保育を導入する保育施設の人気が高まっています。エイゴホイクパークでも様々な施設をご紹介していますので、「英語保育って何をするんだろう?」というところからでもチェックしてみてはいかがでしょうか。